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昆虫博物学  オオヒョウタンゴミムシ の体長調査

昆虫博物学

オオヒョウタンゴミムシの体長調

 

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体長50㎜に達する♂個体。

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50㎜個体の横向き。

 

オオヒョウタンゴミムシの体長

体長が究極の個体を参考に記されるクワガタムシに対して、他の昆虫は実際の大きさよりだいぶ小さく記されているのが現状。

これは基より基本的な博物学の無が原因の他ない。

図鑑やインターネットで本種の体長を調べると次のようになる。

●28~38㎜●37~42㎜●28~43㎜など、いずれにせよ最大43㎜を超えない

最も多いのが28~43㎜で、図鑑やインターネットに多く記され、流用されている。

  

前記の通り、クワガタムシの体長が究極で記されていることから、クワガタムシに似る

ヒョウタンゴミムシならば注目され、その大きさもほぼ正確に記されているのではないかと、今回の調査に至った。

 

[調査内容]

調査したヒョウタンゴミムシはヒョウタンゴミムシとオオヒョウタンゴミムシの2種。ここではヒョウタンゴミムシ最大種のオオヒョウタンゴミムシの調査結果を報告する。

●データは採集した100個体の体長をノギスにて測定(100個体限定採集で、それ以上は採集無)。

●採集場所は海岸(河口周辺の一ヵ所)に限定。

●雌雄の区別なく計測。

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採集した100頭の個体。

[調査結果]

最大個体は50㎜に達し、最小個体は35㎜。

以下計測データ。

35㎜  1個体       43    13

36   0         44    16

37   3         45    13

38   6         46    7             

39   6         47    1

40   9         48    2  

41   11         49    1

42   10         50    1

 

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左:50㎜  右:40㎜の比較。

[結果]

体長35㎜~50㎜・(平均は43㎜程)

一般に図鑑などで最大サイズとされる43㎜が平均的なサイズであり、他昆虫と同様に、本種の体長もだいぶ小さく記されていることがわかった。

 

[考察]

〇一般に最大とされる43㎜と今回の最大50㎜とでは2倍ほども大きさが違う。

この50㎜もあくまで調査1日(1回)の結果であり、種の最大サイズではない。

個人的に、予想最大サイズは52~53㎜程度と考える。

何故このようなことが起こるのか。

あまりに机上の知識が進み、実際が無視されている結果の他無い。

 

〇本種は雌雄の判別が難しいとされているが、比較検討により、容易に判別できる。

♂:♀に比べ、頭部、大顎が大きく、上翅部がやや小さい。

♀:♂に比べ、頭部、大顎が小さく、上翅部がやや大きい。

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左:♀     右:♂

〇本来、昆虫は♂に比べ♀が大きいが、本種はクワガタムシと同様に♂が大きい

また、♂の野外活動は活発で、採集される多くは♂となる(♀は産卵に入ることからも)。※100頭のうち、♂84頭・♀16頭。

これは時期により、発生初期と後期は♀が増える傾向にある。

 

〇自然の残された大河の河口は本種にとって理想的な環境だ。

ほとんどの河口では水門が設置され、護岸工事がなされており、こういった河口では本種の棲息は見られない。 

大河で流木が広い範囲で堆積し、河口縁は緑の草木でおおわれた場所には当然のこと大きな個体も存在する。

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広大な河口には無数の流木と緑が広がる。

多産する河口では、棲息は河口だけに留まらず、川沿いに内陸部へと分布を広げている。本種の棲息場所が海岸(砂浜海岸)にだけではなく、川岸(河原砂地)とあるのはそれで、海の無い県にも分布していることとなる。

基の河口の個体群は開発により根絶したが、内陸部に個体群が残っている場合もある。

また、生息地の砂の移動など、人為的な要因で局所的に分布が広がることもある。

 

 

以上、オオヒョウタンゴミムシにおける体長(大きさ)の一知見として記す。